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科学とニセ科学について書くブログ

コミックサイエンス撲滅委員会とコラーゲンについて

「コミックサイエンス撲滅委員会」なる組織ができるらしい。今のところ正式稼動前みたいだけど、ブログは開設されている。
コミックサイエンス撲滅委員会
ちょっと分かりにくいがどうやら元木一朗氏が仕掛け人らしい。コミックサイエンス撲滅委員会のブログにはこんなことが書かれている。


引用元:宣言: コミックサイエンス撲滅委員会

みなさんはコミックサイエンスという言葉をご存知でしょうか?コミックサイエンスとは、一見科学のようで、実際はほとんど科学的な根拠に欠けている「科学のようなもの」です。


それってニセ科学とか、似非科学とか、擬似科学とか言われているものだよね。どうして聞きなれない「コミックサイエンス」なんて名前をつけたのだろう。「コミック」では漫画を連想してしまうというコメントが複数ついているし、他にもっと定着している言葉があるんだから、わざわざこんな言葉を使う必要はないと思うのだが。


ところで、この宣言のなかでコミックサイエンスの例として取り上げられているのが、コラーゲンの話。コラーゲンが美容にいいと宣伝されているのは委員会に言わせれば「コミックサイエンス」らしい。確かにコラーゲンの美容効果は過度に宣伝されていると私も思う。でも、委員会の説明はちょっと雑過ぎるんじゃなかろうか。(強調は引用者による)

コラーゲンの分子量は非常に大きいので、コラーゲンを肌に塗ってもそれは経皮吸収されませんし、経口摂取してもコラーゲンとして体内に吸収されることもありません。コラーゲンを食べた場合、それは胃液などで消化され、ペプチド(アミノ酸が複数結合したもの)やアミノ酸に分解されます。分解されたペプチドやアミノ酸は小腸から体内に吸収され、体内で生産されるコラーゲンの原料として利用されますが、これらを「コラーゲン」というタンパク質で摂取する必要性は全くありません。したがって、「コラーゲン」を表記されているものを塗ったり、あるいは食べたりしても、肌がぷりぷりになるといった効果は特段期待できません。単に、タンパク質を摂取しているのと何も変わらないのです。


確かにコラーゲンが経皮吸収されないというのはもっともらしい。でも、だからと言ってコラーゲンを含む美容グッズを皮膚に塗ることが無意味だとは限らない。それはコラーゲンには保湿効果があるからだ。「肌がぷりぷり」というのがどういう状況かによるが、乾燥している肌よりも適度に水分を含む方が「ぷりぷり」していたとしても不思議ではない。

では、経口摂取ではどうだろうか。まず、コラーゲンが主成分のゼラチン加水分解物は高分子のポリペプチド(〜15 kD)のまま腸管から取り込まれる可能性があり、生体内でバラバラのアミノ酸とは異なる挙動を示すというマウスでの動物実験の結果がある*1。委員会の説明にあるようにアミノ酸・ペプチドレベルのまで分解されなくてもコラーゲンは吸収される可能性がありそうだ。

こんな記事もある。
毎日新聞

明治製菓食料健康総合研究所が今年3月、日本食品科学工学会誌に報告した試験結果はそのひとつだ。魚のうろこから抽出したコラーゲンペプチドを約190人(25〜45歳)の女性に4週間食べてもらった。1日に食べる量を2・5、5、10グラムの3グループに分け、偽コラーゲン(でんぷんのデキストリン)の摂取グループと比較した。

 その結果、コラーゲンの摂取グループは摂取しないグループに比べ、肌の水分量が増え、特に30歳以上で5グラム以上を摂取したグループで増えた。弾力性では差はなかった。


もちろん、先に挙げた動物実験は人間にそのまま当てはめられるものではないし、そもそも皮膚へ効果は検出されていない。毎日新聞の記事でも

日本ゼラチン・コラーゲンペプチド工業組合(東京)が先月、東京都内で開催したシンポジウムでコラーゲンの研究で知られる藤本大三郎・東京農工大名誉教授は「人での効果を証明する科学的な証拠はまだ不十分」と話し、人を対象にした複数の試験結果が出るまでは確かなことは言えないと指摘した。


という専門家の意見がつけられている。仮に効果があったとしても、宣伝されているほどの効果があるとは限らない。しかし、だからといって現時点で効果がないと考えるのが当然のことであるかのように書いてしまうのは迂闊過ぎる。

公平のために書いておくと、宣言: コミックサイエンス撲滅委員会の後半には以下のような記述もあって、コラーゲンに効果がないことが絶対的に正しいと委員会の中の人が考えているわけではないらしい。

確かに、「絶対にコラーゲンが肌に良い効果を及ぼさない」とは言い切れないかも知れません。


でもその直後に

しかし、「ほぼ間違いなく、良い効果は得られない」ことは知っているのです。


と書いている。「ほぼ間違いなく」と言えるほど、現状でコラーゲンの効果は明らかになっていると言えるのだろうか。

繰り返しになるが、私はコラーゲン配合の美容グッズの宣伝が必ずしも正当なものだとは思っていない。それはコラーゲンの効果がありえないことだからではない。効果があることが現時点できちんと証明されていないにも関わらず、さも効果があるかのように宣伝されているのが問題なのだ。現時点では効果があるかないか分からないものを「ほぼ間違いなく」効果がないと書いてしまうコミックサイエンス撲滅委員会も、効果があることが確定事項のように宣伝してしまう業者もどちらも科学的に正当な態度をとっているとは言えないと思う。

*1:S. Oesser, M. Adam, W. Babel, J. Seifert, J. Nutr. 129, 1891 (1999)..

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