Not so open-minded that our brains drop out.

科学とニセ科学について書くブログ

ホメオパシーはカウンセリングとして許容されるか?

ホメオパシーのレメディに効果がないことを知った上で、それを許容しようという人がいる。

例えば、以下で引用する『インディペンデント・メディア「レアリゼ」』の記事では、ホメオパシーに効果がないことと、ホメオパシーによる通常医療の否定の問題を理解した上で、ホメオパシーのカウンセリングとしての可能性を肯定的に扱っている。

これらの手記を読むと、ホメオパシーは、むしろカウンセリングの手法と考えるほうが良く、心因性の症状には、一定の効果があるのかもしれません。

(引用元: http://www.realiser.org/group/article/index.php?id=49)

そもそもホメオパシーにはカウンセリング効果があるのか?

確かにホメオパスと患者とのやりとりがカウンセリングとしての効果を持つ可能性はある。しかし、可能性があるというだけで証明されていない。上の引用部分からも分かるように、この記事の著者がホメオパシーにカウンセリング効果があると思う根拠は、「手記」すなわち体験談だ。逆にホメオパシーとの対話が悪い効果を及ぼす可能性もあるし、何の効果もないという可能性も十分ある。ただ、ホメオパスとのやりとりの後に症状が和らいだからというだけでは、『三た療法』と何も変わらない。効いたのではなく効いたように感じているだけということもありうる。

カウンセリング効果があれば偽薬を与えてもいいのか?

仮にホメオパシーにカウンセリング効果がありそれが証明されたとしたら、ホメオパシーの臨床応用は許容されるのか? ちょっと待った。そもそもカウンセリングに偽薬は必要なのか? ホメオパシーを使わないただのカウンセリングでは駄目なのか?

少なくとも偽薬の処方には避けられない問題がある。ホメオパスは普通レメディが偽薬だとは認めないし、そのホメオパスにかかる患者の大半もレメディが偽薬だとは思っていないことだろう。その患者は当然、レメディの効果に期待してその治療方法を選び対価を支払う。にもかからわずホメオパスは患者に偽物の薬を与える。これはインフォームドコンセントの考えからも経済的・倫理的な観点からも問題がある行為だ。偽薬と知っていたらホメオパシーは選ばなかったという患者もいるだろうし、料金の中にレメディ代*1が含まれていることに納得しない患者もいるだろう。

プラセボ効果はホメオパシーを正当化する?

始めに引用した『レアリゼ』の記事では以下のようなメンバーの報告が紹介されている。

どちらかというと、セラピーのおまけという感じで、効けば儲け物程度にこちらも構えていたわけだが、しかしこの最後の一押し「レメディ」があるとないとでは、プラシボ効果にきっと差が出るのだろう。病理が精神面のものである場合、こうした「信じて良くなる」おまじない的なプロセスは、科学的には証明が難しいだろうが、かなりの効果があるように感じた。

(引用元: http://www.realiser.org/group/article/index.php?id=49)

偽薬を処方することでプラセボ効果が高まるとの推論だ。偽薬を与えることでより大きな効果が期待できるのなら、ホメオパシーは許容されるのか?

まず第一に、一般論から言って、正しい目的は誤った手段を正当化しない。第二に、Moermanらが指摘したように偽薬に頼らなくてもプラセボ効果と同様の効果が得られるという意見もある。*2このようにレメディによって効果が高まるにしても、安易に偽薬に頼るのは得策とは言えないし、倫理的な問題がプラセボ効果によって消え去ってしまうわけではないことに注意する必要がある。

ホメオパシーの導入は医療崩壊を防ぐ?

ところで日本では、自然治癒する風邪のために大学病院に行ったり、昨今では緊急病院に駆けつけたりする人々が増えているようですが、これは限りある病院のリソースを浪費する行為として批判もあるようです。その意味では、医療保険制度の破綻を防ぐために、自然治癒による「治療」を何らかの形で導入する可能性も、あるのかもしれません。

(引用元: http://www.realiser.org/group/article/index.php?id=49)

確かに軽い症状の患者がホメオパスのところに流れ、あるいはホメオパシーによるセルフケアが普及すれば、より深刻な状態の患者が利用すべき病院というリソースに余裕ができるかもしれない。

しかし、この種の問題の解決策としてホメオパシーを挙げるのは、医者・病院・医療保険の予算が足りないから偽薬で我慢しろというのと同じことじゃないか。これはあんまりだし、医療崩壊を防ごうとして医療を偽医療にすり替えるというどうしようもなく不毛な行為とも思える。もちろん、この種の医療問題は制度だけの問題ではなく患者側の利用方法とモラルにも問題があるわけだが、だからといって患者を偽薬で騙していい理由にはならない。もし国が医療制度の問題を偽薬という嘘で取り繕おうとするのなら、それは国民全体に対する欺瞞でもあるだろう。*3

*1:しかも、本当はただの飴玉でも同じなのに、無駄な手間がかかった砂糖玉の代金を患者に負担させることになる。

*2:詳しくは[http://d.hatena.ne.jp/Mochimasa/20100327/1269686848:title]

*3:国が医療費削減のために代替医療を導入するリスクについてはapj氏がすでに指摘している。http://www.cml-office.org/ehold/?logid=6175

広告を非表示にする