Not so open-minded that our brains drop out.

科学とニセ科学について書くブログ

謎のホメオパシーCD「サイレントヒーリング」

ホメオパシージャパン株式会社はレメディや関連書籍はもちろん、それ以外にもさまざまなグッズの販売を手がけているが、どのグッズも突っ込みどころ満載である。そんな粒ぞろいの商品の中でも、今回ご紹介するのはこの商品はひと味違う。



この商品、製造はWorld Development Systemsというイギリスの会社(以下、WDS社)*1で、国内の代理店はホメオパシージャパン株式会社らしい*2のだが、楽天市場のショップ『ケンコーコム』でも販売されている*3

イマドキのドラッグストアは何でも売っているとは聞くが、こんなホメオパシーグッズまで売っているケンコーコム、さすがである*4

「サイレントヒーリング」とはいかなる商品か

定番のレメディならまだしも、この商品はホメオパシー初心者には分かりづらいハイレベルな変化球的な商品である。そこで、このエントリーではケンコーコムの商品ページに書かれている説明を逐一読み進めて行くことで、確実な理解を目指すことにする。

商品説明
「サイレントヒーリング」は、ヒーリングパワーを秘めた沈黙のホメオパシーCDです。

(引用元:http://item.rakuten.co.jp/kenkocom/e090143h/)


なるほど。この商品はCDらしい。
ん? 沈黙?

沈黙のホメオパシーCD」?


よく分からないので読み進めてみよう。

このCDは音が再生されません。

(引用元:http://item.rakuten.co.jp/kenkocom/e090143h/ 太字による強調は引用者による)


致命的決定的に重要なことが書かれていた。商品名のサイレントは文字通りの「無音」を意味するらしい。予想通りの変化球だが、捉え用によっては嘘がない誠実な商品名と言えないこともない。


ここまで読んで「無音のCDで9,450円なんてボッタクリだ!誰が買うか!」と思ったあなた、

次の一文を読んでから再考してほしい。

34000を超える生体共鳴パターンが沈黙と共に放たれます。

(引用元:http://item.rakuten.co.jp/kenkocom/e090143h/ 太字による強調は引用者による)


一つの生体共鳴パターンあたり たったの0.3円未満という計算だ。よく分からないが、なんとなく安っぽいお手頃な気がする。

重要な注意事項

万能な商品などこの世に存在しない。この商品にだって欠点はある。きちんと注意書きも引用しておこう。

ご注意
このCDにはコピー・録音防止プログラム内に定められた登録商標権があります。これにより、このオリジナルのいかなるコピーの製造・録音も防止されます。このCDを別のCD、コンピュータ、MP3を含むいかなるメディアに対しても、コピー・録音することを禁じます。

(引用元:http://item.rakuten.co.jp/kenkocom/e090143h/)


登録商標権が私的コピーとどう関係しているのか不明だが、とにかく「サイレントヒーリング」はコピーコントロールCDを使用した商品らしい。外出先でもiPodiPhoneを使って癒されようと思っていたナウなヤングの皆さんには残念なお知らせだ*5。外では懐かしのCDウォークマンを使うしかなさそうだ。



「そうは言ってもゴニョゴニョすればコピーしたりMP3にできるんでしょ?」と思ったあなた、


コピー、ダメ絶対。


早まった行動に出る前に次の文をよく読んで欲しい。

本製品には2段階のアンチ・コピー・デバイスが付いており、それによって本製品の複製を試みたとしてもその複製品は共鳴パターンを送ることを妨たげられるため、実質的に機能しません。同時にオリジナルCDも実質的に機能しなくなります。くれぐれもご注意ください。尚、誤ったコピー・録音した場合であっても交換・返品は致しかねます。

(引用元:http://item.rakuten.co.jp/kenkocom/e090143h/)


なんとコピーできないばかりか、コピー元のオリジナルCDが駄目になってしまうらしい。 ROMのはずのCDでコピー元のメディアがどう「実質的に機能しなくな」ってしまうのかは謎である。*6

恐るべし、「サイレントヒーリング」の謎のコピーコントロール技術。

示唆に富む余談

WDS社のビクター・シムズ氏はホメオパシージャパンに招かれて日本で講演を行っていたようだ。その時の模様がホメオパシージャパンのウェブサイトに記載されている。

エネルギーメディスンの講演やWDS商品の原理や特徴などについての説明があり、午後には近未来の波動機器「e- Lybra」の概説、および実際に会場から被験者を募ってのデモンストレーションが行われましたが、一時、まるで集団催眠にかかったかのように、ほとんどの方が眠っているという恐ろしい現象が見られました。その後東京会場の全員がコードを握っての興味深い体験デモが行われました。電子プルービングとよぶべきもので、面白い体験でした。尚、会場では、サイレントヒーリングをかけていました。

(引用元:http://www.homoeopathy.co.jp/sinchyaku_new/index.cgi?index=980 太字による強調は引用者による。)


さらに参加者の感想にも

●不思議なことに今日はVictor氏が話されている間、異常な眠気に襲われて始終ウトウトしてしまい、まともに話が聞けたのは、ほとんどラストの1時間だけでした。聞き漏らしだらけで残念です。

(引用元:http://www.homoeopathy.co.jp/sinchyaku_new/index.cgi?index=980 )


もしや、この恐ろしい現象もサイレントヒーリングの効果なのだろうか。会場でサイレントヒーリングがかけられていた以上、その可能性は誰にも否定出来ない。講義中に眠くて仕方ない学生諸君は、明日からは講義室で誰かがサイレントヒーリングを再生していないか見回してみるべきだろう、教員の話がつまらないと決め付ける前に

*1:http://www.wds-global.com/default.aspx

*2:http://www.homoeopathy.co.jp/company/index.html

*3:おかげで不要な訴訟リスクを避けて商品画像をこのエントリーに載せることができた!

*4:ケンコーコムと言えば薬事法改正によるネットショップでの医薬品販売の規制強化に対して反対する声明を発表し「消費者の利益のためにも」と訴えている会社だ。ネットでの販売規制とホメオパシーグッズの販売は全くの別件だが、こういう商品を売っている会社に「消費者の利益」を語られても説得力に欠けるように思う。http://camp.kenko.com/signature/form.html

*5:どうしてもiPodを使いたいという人はWDS社の別商品"e-Lybra〓 iPod System "を使うという手も。 http://www.wds-global.com/products/products.aspx http://www.bio-resonance.com/iPod.htm

*6:余計なお世話かもしれないが、ケンコーコムの中の人は客がコピーを試みたことを隠して"実質的に機能しなくなった"返品してきた場合はどう対処するんだろうか? もしかして「お客様、大変申し上げにくいのですが、ご返品いただいた商品を波動測定器で測定しましたところ、、、、」