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Not so open-minded that our brains drop out.

科学とニセ科学について書くブログ

山口ホメオパシー訴訟は和解で終結。しかし、ホメオパシー団体は"言いたい放題"

ホメオパシー

ホメオパシー助産師が乳児に対するビタミンKの投与を怠り死亡させたとする山口での訴訟は、被告の助産師側が原告側に和解金を支払うという形で終結した。朝日新聞によれば、

生後2カ月の長女が死亡したのは、ホメオパシーという民間療法をする助産師が適切な助産業務を怠ったためだとして、山口市の女性(33)が助産師を相手取り、約5600万円の損害賠償を求めた訴訟で、助産師側が女性に和解金を支払うことで合意したことが21日、分かった。和解金は数千万円とみられる。

(引用元: http://www.asahi.com/health/news/SEB201012210082.html)


この裁判は民事裁判であり、この決定の是非について第三者がとやかく言うことではないだろう。問題は、被告の助産師が所属していた日本ホメオパシー医学協会の訴訟後の対応である。

JPHMAとしては、裁判中であったため、本件に関しては当初からコメントを差し控えてきました。今回、和解が成立し、裁判が終了したため、これまで、あまりに事実とかけ離れた報道が1人歩きしておりましたので、ここに真相を記載させていただきます。

(中略)

そして、今回も事実無根の報道がなされ、あたかもホメオパシーが原因で亡くなったかのようにホメオパシーは危険であるという印象を世の中の人に与えられることを危惧します。

(引用元:http://www.jphma.org/About_homoe/jphma_answer_20101222.html)


日本ホメオパシー医学協会は相変わらずホメオパシーと乳児の死亡は関係ないという立場を堅持している。「当初からコメントを差し控えてきました。」とあるが、無関係という主張はこれまでも繰り返しなされてきたものだった*1。つまり、これまでも言いたい放題、今も言いたい放題というのが実情だ。そして日本ホメオパシー医学協会が悪質がより悪質なのは、「口外しない」という和解の条件を悪用しようとしていることである( 追記: これに関しては事実誤認の可能性があるという指摘を受けた。詳細は以下を参照されたい。 http://togetter.com/li/82661 )

今回の和解の条件には「内容を口外しない」が含まれており、原告、被告とも内容に関して、事実を話せない状況にあります。日本ホメオパシー医学協会は、今までのように誤った情報が、ひとり歩きしないように、報道、情報発信する者として、倫理を遵守し、これまでに調査した事実のみに関して、ここに記載させていただくことにしました。

(引用元:http://www.jphma.org/About_homoe/jphma_answer_20101222.html)


言わば"当事者たちが話せないから、代わりに自分たちがしゃべってあげる。"ということだ。全く勝手な言い分である。日本ホメオパシー医学協会のおかれた立場を考えれば、被告の代弁ならまだしも、原告の代弁まで標榜しようとする態度には首を傾げざるを得ない。現実に、日本ホメオパシー医学協会は"あることないこと"を好き勝手に語っている。

原告(母親)は 被告(助産師)が、母子手帳にあるK2シロップの投与欄に「投与した」と記録をしていたことについて言及していますが、真相は、助産師は、母子手帳に「K2シロップ投与」と記載しておかないと、検診時に小児科などで勝手にK2シロップを飲まされるので、原告の意向を受けて、K2シロップを「投与した」と記載したものです。 助産師は、K2シロップ投与という記載は、母親の前で、母親の同意をもらって行ったと言及しています。  

今回亡くなったのは、第二子であり、第一子の時にもこの助産師が対応していました。 第一子の時は、母親に「何もいらない」と言われたので、ビタミンK2シロップも同様に与えていなかったということです。もちろん、ビタミンK2シロップについての事前に説明も行っておりました。母親は、第一子の時から、(薬などを)何も使用しないで欲しい、と繰り返し述べていたので、助産師は、今回もできるだけ現代医学や薬剤の介入のないお産を望んでいると思っていたとのことでした。  

また、今回の訴訟においては、ビタミンK2シロップに関して、助産師から母親への事前説明を行っていたかという点について、双方の主張に争いがありました。   

助産師は「ビタミンK2シロップに関してはもちろん理解し、なぜビタミンKを与えるのかという説明の中で、ビタミンKは止血作用があり、頭蓋内出血の予防のために与える」と説明したと述べています。これに対し、母親は、説明を受けたことを覚えていないらしく、今回の訴訟では母親は事前説明がなかったと主張しておりました。助産師は、基本的に、同意が得られなければ、K2シロップを与えないということはなく、今回は投与前に事前に説明をし、母親の了解を得ていたと主張していました。

(引用元:http://www.jphma.org/About_homoe/jphma_answer_20101222.html 強調は引用者による)


日本ホメオパシー医学協会を通して語られる原告についての記述の真偽はここでは問題にしない。問題なのは、原告が自由に語れないのをいいことに、一方的に情報を垂れ流していることである。特に助産師との間でなされたやり取りや原告の家族構成について書く行為は、プライバシーの侵害と言われても仕方がないだろう。"被害"の有無に関わらず、日本ホメオパシー医学協会所属の助産師にかかっている妊娠女性とその家族は、おしゃべりな協会を通して家族のプライバシーが世間に筒抜けになってしまわないか心配した方がいい。

助産師は「ビタミンK2シロップの代わりにレメディーを」と言っておりません。

ホメオパシーのレメディーは、ビタミンK2のシロップの代用にはなりません。この点、助産師は明確に理解していました。助産師は、助産院で出産したい依頼を受けた時、妊娠中の健診を通して、ホメオパシーについて十分に説明しておりました。妊娠中・出産中・産後と必要に応じレメディーをとってもらうことも説明し、口頭で了承を得ていたとのことです。

ホメオパシーのレメディーは妊娠、出産時のそれぞれの段階で、自己治癒力を触発するために症状に合わせて使用し、一連の適切なレメディーをとることで、妊娠、出産のサポートを行うものです。「ビタミンK2シロップとらなかったこと」と、「ホメオパシーのレメディーをとったこと」は、全く独立した事象です。

(引用元:http://www.jphma.org/About_homoe/jphma_answer_20101222.html 強調は引用者による)


なるほど。日本ホメオパシー医学協会に言わせればそうらしい。たしかに実際にこの助産師がどう言ったのかは伝聞や推測に頼らざるをえない部分があるのは事実だ。しかし、視野を広くとれば、自ずと一般名詞としての"ホメオパシー助産師"の周辺事情が明らかになってくる。

例えば、これまでも何度も引用してきたが、日本ホメオパシー医学協会会長の由井寅子氏の著書にはこんな記述がある。

赤ちゃんも排泄するのです。生まれてきてすぐに脂漏性湿疹、突発性発疹になるのは、胎盤からもらった毒を排泄しているだけのことなのです。そこに亜鉛軟膏を塗ったりすると、大変なことになってしまいます。亜鉛華軟膏を使って赤ちゃんの成長が止まったり、知能が遅れたりすることはホメオパシーならばよく知られているところです。血液凝固のためにビタミンKを注射したりしますが、一足飛びにがんマヤズムが立ち上がるし、逆に出血が止まらなくなることもあるのです。そして難治の黄疸になることもあります。ホメオパシーにもビタミンKのレメディー(Vitamin-K)はありますから、それを使っていただきたいと思います。

(引用元:由井寅子著『ホメオパシー的妊娠と出産』36ページ、強調は引用者による。)


また、同書には、日本人初の助産師ホメオパス*2とされ日本ホメオパシー助産師協会会長だったとされる*3鴫原操氏の発言としてこんな記述もある。

K2シロップ
生まれた翌日、退院の日、1カ月検診、この3回、赤ちゃんにK2シロップを飲ませていますよね。これは、頭蓋内出血とか、出血傾向の予防のためなのです。それで、ビタミン剤の実物の投与があまりよくないと思うので、私はレメディーにして使っています

(引用元:由井寅子著『ホメオパシー的妊娠と出産』68ページ、強調は引用者による。)


そして、朝日新聞の報道によれば、日本助産師会総務担当理事(!)*4のホメオパシー助産師、神谷整子氏も以下のように告白している。

テレビ番組で取り上げられたこともある有名助産師で、昨年5月から日本助産師会理事を務める神谷整子氏も、K2シロップの代わりとして、乳児にレメディーを使ってきた
取材に応じた神谷理事は「山口の問題で、K2のレメディーを使うのは、自重せざるを得ない」と語る。この問題を助産師会が把握した昨年秋ごろまでは、レメディーを使っていた。K2シロップを与えないことの危険性は妊産婦に説明していたというが、大半がレメディーを選んだという。
一方で、便秘に悩む人や静脈瘤(りゅう)の妊産婦には、今もレメディーを使っているという。

(引用元: http://www.asahi.com/health/news/TKY201008040482.html 強調は引用者による)


さらに、日本ホメオパシー医学協会が隠しコメントとしてビタミンK2シロップのリスクを示唆する"デタラメな証拠"をウェブサイトにこっそり掲載していたことも参考になるかもしれない*5


これらの事実を踏まえて日本ホメオパシー医学協会が和解後に出した文章の続きを読んでみよう。

ホメオパシーのレメディーは妊娠、出産時のそれぞれの段階で、自己治癒力を触発するために症状に合わせて使用し、一連の適切なレメディーをとることで、妊娠、出産のサポートを行うものです。「ビタミンK2シロップとらなかったこと」と、「ホメオパシーのレメディーをとったこと」は、全く独立した事象です。

(引用元:http://www.jphma.org/About_homoe/jphma_answer_20101222.html 強調は引用者による)


誰が独立した事象だと思うだろうか。明らかに日本ホメオパシー医学協会とその関連団体はビタミンK2シロップが危険だと煽り、その代替としてレメディを推奨していたし、その考えは日本助産師会の理事にまで浸透していたのだ。少なくとも私はホメオパシー助産師が通常医療を否定する危険な存在であることに疑う余地はないと思うし、和解後の対応を見て日本ホメオパシー医学協会が悪質で異常な組織であるという見方をより強くした。

*1:例えば、 http://jphma.org/About_homoe/jphmh_answer_20100813.html

*2:http://www.jphma.org/homoeopath/h_sa/h_si_1.html

*3:『ホメオパシー的妊娠と出産』の271ページの紹介による。

*4:日本助産師会は事件発覚後も何の処分もしていないし、現在もこのポジションに居るようだ。最近では、ぬけぬけと毎日新聞による自然出産を扱った映画に関する取材に「お産は命がけ」などと語っている。それは事実だが神谷氏は他人にとやかく言えるご身分なのだろうか。http://mainichi.jp/life/edu/news/20101128ddm013100025000c.html

*5:http://d.hatena.ne.jp/Mochimasa/20100806/1281117346