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科学とニセ科学について書くブログ

国産個人向け遺伝子解析サービスGeneQuestを利用してみた

国産個人向け遺伝子解析サービスGeneQuestがサービスを開始したので、早速試してみた。

利用の流れ

  1. 公式サイトからサンプル採取キットを購入。
  2. 自宅に配達されたキットを使って唾液を採取。
  3. 署名した同意書と一緒にサンプルを送り返す。
  4. 約4週間で解析結果がwebから見れるようになる。

これだけ。難しいことはない。

解析結果はこうなる。

参考例として私の解析結果の一部を紹介する。

f:id:Mochimasa:20140321112042p:plain


上記の例では、糖尿病のリスクが多少高いことが示されている。この結果は後述する23andMe社の解析結果と比べ、リスクが平均よりも高いという点では一致したが、その倍率は微妙に異なっていた。これはおそらく予測の根拠にした研究の違いや計算手法の違いのためだろう。リスクとはもともと確率論的なものだし、表示される数値は飽くまで現時点での研究成果に基づくものだ。利用者はその点を理解した上で、分析結果に接する必要がある。幸いにしてGeneQuestのサイトでは、落ち着いた日本語でそのことが説明されているし、参考文献や予測の根拠となった文献が明記されている。また、必要であれば専門家によるカウンセリングを申し込むことができるようだ。

23andMeとの比較

この種のサービスの先駆けとなったアメリカの23andMe社と比較するとこんな感じ。23andMeの詳細については、本ブログの以前のエントリー参照。

GeneQuest 23andMe
価格 ¥49,800 $99
生データダウンロード
病気のリスク予測サービス ○→☓
医薬品に対する感受性予測サービス
アルコール感受性等の体質予測サービス
祖先・親戚探しサービス
日本国内でのサービス
日本人向けの解析 ある程度、特化している。 必ずしも日本人向けではない。


23andMeとはwebサイトのUIもどことなく似ているし、サンプル採取キットも同じメーカーのものが使われていて、SNP解析には共にIllumina社の製品を使っているらしい*1。明らかに23andMeを意識した作りだ。その23andMeと比較すると、コスパ的には正直微妙。とはいえ、23andMeと同列に語れるような本格的サービスが日本国内には他にない以上、多くの日本人にとってGeneQuestが最有力の選択肢となるだろう。GeneQuestが遺伝学的な意味での日本人に特化したサービスを志向しているというメリットもある。

病気のリスク予測サービスは23andMeとの違いが鮮明に出ている部分だ。GeneQuestは、確定的なリスク予測が可能な単一遺伝子疾患、いわゆる遺伝病を敢えて評価対象から除外しているという。この判断には、23andMeが米当局の警告でこの種のサービスを停止してしまったことが背景にあるらしい*2。また、アンジェリーナ・ジョリーで話題になった乳がんの予測に関しても、誤判定で乳房切除してまう懸念から、予測対象とはしない方針のようだ*3。これらの病気の予測に興味があった人にとっては期待はずれだろうが、一方でこの種の予測にリスク*4があるのは事実だし、23andMeのようにサービス停止に追い込まれては元も子もない。この点は、利用者によって評価が分かれるところだろう。

また、ここで示したサービス内容は飽くまで現時点でのものであることに留意する必要がある。「祖先解析」「薬物反応」(生データの)「ダウンロード」は、解析結果のトップページに灰色になったリンクが用意されていて、クリックするとそれらのサービス提供についての意見が送れるようになっている。今後のバージョンアップに期待したい。