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Not so open-minded that our brains drop out.

科学とニセ科学について書くブログ

案の定、由井寅子氏が放射能に対処するホメオパシーのレメディについて語りだしたらしい件

すでに先日のエントリーでホメオパシー提唱者たちが震災に便乗しようとしていることを指摘した。加えて、そのエントリーでは過去に震災に便乗したホメオパシー提唱者たちには、原子力関係のデマを広めているケースがあったことも紹介した。本エントリーでは現在進行形でホメオパスが原子力に関する悪質なデマを広めていることを指摘しようと思う。


日本ホメオパシー医学協会会長であり、ホメオパシージャパン系ホメオパシー団体の実質的なトップであるホメオパスの由井寅子氏は、13日の第3回 日本ホメオパシー医学国際シンポジウムにおいて、以下のような内容について発表したようだ。

由井寅子JPHMA会長の発表は、3月11日に発生した東北地方太平洋大地震被災者への心のケア、福島原発の放射性物質漏えいで起こりえる危険性と被害と対応するレメディーの紹介から始まりました。
この未曽有の事態に対し、各家庭でホメオパシーのホームキットを利用することの大切さを再確認し、ひとりひとりが気付いて賢く、力強く生きていってほしいという願いが伝えられました。

(引用元: http://jphma.org/kyoto_symposium/index.html 強調は引用者による。)


さらに悪いことに、由井氏の配下のホメオパスたちが東北地方各地で「無料、ホメオパシー健康相談」を行おうとしているらしい。

●東北地方の各地にて、JPHMA認定ホメオパスによる無料、ホメオパシー健康相談を行う予定をしております。
開催地や時間などは、現在は未定となっておりますが、今後ホームページにてお知らせしてまいります。

(引用元: http://jphma.org/gienkatsudo/20110313_gienkin.html)


由井氏らの発表と計画は複数の意味で悪質である。まず第一にホメオパシーは全くの無効であるにも関わらず、それを被災者に用いようとしていることだ。これは、言うなれば、子ども銀行の紙幣を義援金の募金箱に入れるに等しい行為だ。

次に、「無料、ホメオパシー健康相談」というのは文字通りの意味よりも悪い物だと考えざるを得ない背景がある。これまで由井氏らの団体は「健康相談」と称して「カルマ」やそれに類する概念を持ち出して霊感商法まがいの"お医者さんごっこ"を行なってきた過去がある*1。過去の事例に照らして考えれば、少なくとも私には、「健康相談」という用語が「診断」や「治療」というNGワードを避け、医師法違反を回避するための言葉だとしか思えない。

そして、より具体的には、由井氏という人物がホメオパシーで放射線障害対策について発表したらしいことの影響力は無視することができないという事情がある。由井氏は日本最大のホメオパシー団体のボスであり、彼女の発言はその影響下にあるホメオパス*2の「健康相談」の内容に少なからず影響力をもっていると思われる。

山口県で助産師がホメオパシー*3に頼った結果、病気予防に必要なビタミンK剤を与えず乳児を死なせてしまったとして訴訟が起こされたことは記憶に新しい。実は、この事件以前に、由井氏は著書の中でこう述べていたのだ。

赤ちゃんも排泄するのです。生まれてきてすぐに脂漏性湿疹、突発性発疹になるのは、胎盤からもらった毒を排泄しているだけのことなのです。そこに亜鉛軟膏を塗ったりすると、大変なことになってしまいます。亜鉛華軟膏を使って赤ちゃんの成長が止まったり、知能が遅れたりすることはホメオパシーならばよく知られているところです。血液凝固のためにビタミンKを注射したりしますが、一足飛びにがんマヤズムが立ち上がるし、逆に出血が止まらなくなることもあるのです。そして難治の黄疸になることもあります。ホメオパシーにもビタミンKのレメディー(Vitamin-K)はありますから、それを使っていただきたいと思います。

(引用元: 由井寅子著『ホメオパシー的妊娠と出産』36ページ)


誤解のないように明確にしておきたいのだが、由井氏の発言・主張が問題の助産師の行動に繋がったとする直接的な証拠を私は持っていない。しかし、由井氏は「日本ホメオパシー医学協会会長」であり、「日本ホメオパシー財団理事長」であり、「ホメオパシー博士」なのだ。由井氏の発言が問題の助産師の行動に影響を与えたと考える蓋然性は十分にあると考える。そうでなければ、どうして出産のプロであるはずの助産師が深刻な副作用も報告されていないビタミンKの投与を怠ったのか。どうして由井氏の団体に属する他の助産師も同様にビタミンKの投与に否定的だったのか*4

今回の震災に際しても、由井氏の配下のホメオパスたちが由井氏の発表に基づき、被災者にホメオパシーで放射線障害対策を施す可能性、最悪の場合にはそれを正しい対処の代替としようとする可能性*5を疑うのは勘ぐり過ぎではないと思う。少なくとも疑われても仕方ないことを由井氏らの団体はこれまでやってきたのだ。


以上のような理由から、ホメオパシーのレメディが砂糖玉に過ぎず、それ自体が無害だからといって、ホメオパスたちの被災者をターゲットにした活動を見過ごすことはできない*6。ホメオパスたちの活動を注視していく必要がありそうだ。

*1:http://d.hatena.ne.jp/Mochimasa/20101219/p1 http://d.hatena.ne.jp/Mochimasa/20101024/p1

*2:ホメオパシーの施術者のこと。

*3:ホメオパシーにおける「薬」のことで、実際にはただの砂糖玉。尤も日本のホメオパシー関係者は少なくとも表向きには薬事法対策のため「健康食品」と位置づけている。

*4:相関図を見れば分かりやすい。http://d.hatena.ne.jp/Mochimasa/20100815/1281855817

*5:そういう対処が必要な人がホメオパスに接触する可能性はかなり低いかもしれない。ただし、ホメオパスたちが必要な人だけをターゲットにするとは限らないことも考えなければならない。彼らは、これまでも何かにつけて「カルマ」や「遺伝」、そして『電磁波』を持ち出して危機を煽ってきたのだ。

*6:かといって止める手立ても思いつかない。残念なことに。