やる夫で学ぶマクロビの歴史と桜沢如一の生涯 2
第1回では、マクロビオティックの創始者 桜沢如一がその原形である食養と出会い、独自性をもった食事法・思想であるマクロビオティックが成立するまでを説明した。本エントリーでは、マクロビ自体からは少し離れて如一の破天荒な政治活動の来歴をご紹介する。
危険分子『桜沢如一』
如一は1941年春、偕行社という陸軍の関連団体で講演を行った。
___ / \ キリッ / \ , , /\ / (●) (●) \ 『日本を滅ぼすものはたれだ』 | (__人__) | \ ` ⌒ ´ ,/ . /⌒〜" ̄, ̄ ̄〆⌒,ニつ | ,___゙___、rヾイソ⊃ | `l ̄ . | |
講演の中身は反戦演説だったという。真珠湾攻撃が行われるのはその年の12月である。如一はこの緊迫した時期に大胆にも軍関係者の前で反戦演説をぶったのだ。なお、『日本を滅ぼすものはたれだ』という挑発的な文言は開戦直前の10月に出版され、後に発禁になる如一の著書のタイトルである。
如一の思想からは西洋文明に対する対抗意識をヒシヒシと感じるし、彼の思想には日本(人)に優越性を主張する部分*1があったように思われる。そんな如一が軍国主義的な当時の世相に反して戦争に反対した理由は以下のようなものだったらしい。
もちろん食養理論の上に立っての言動であるが、負けるから戦争をやってはいけない、やるなら食養を十分に取り入れろ、そうでないと戦死より病死が多くなるという論法であった。絶対反戦論ではなく、愛国的な発言だが、当時としては命がけだった。
(松本一朗『食生活の革命児 桜沢如一の思想と生涯』 (1976年) 73,74ページ)
さすがの如一も開戦からしばらくは表立って反戦活動することはできなかったようだが、終戦が近づく1944年、新潟県の妙高に疎開していた如一はついにある計画を実行に移す。
____ / \ / _ノ ヽ、_ \ / o゚((●)) ((●))゚o \ このままじゃ日本は戦争に負けてしまうお | (__人__) | \ ` ⌒´ / ____ / \ / _ノ ヽ、_ \ でも、軍部は飽くまで戦争を続けるつもりだお。 / o゚⌒ ⌒゚o \ | (__人__) | \ ` ⌒´ / ____ /⌒ ⌒\ /( ●) (●)\ /::::::⌒(__人__)⌒::::: \ だからソビエトさんに日米の仲裁をお願いするお! | |r┬-| | \ `ー'´ /
如一は満州に渡り、単身馬で国境を突破して、ソ連に日米の仲裁を依頼しに行こうと画策したのだ。
密航に成功しハルビンについた如一は、食養の講演を通して懇意にしていた浜江省次長の田村敏雄という人物に合う。田村は始め如一の説得を試みるが、最終的に折れて旅券を発行し物資を用意する。さらに、田村は内務省からの如一逮捕令を握りつぶしさえした。
しかし、
/ ̄ ̄\ 銃殺されるだろ、常識的に考えて。 / _ノ \ | u ( ●)(●) ____ . | (__人__) /::::::::: u\ 馬で国境を突破するんだおっ | ` ⌒´ノ/ノ└ \,三_ノ\ ,∩__ . | /::::::⌒( ●)三(●)\ fつuu . ヽ |:::::::::::::::::⌒(__人__)⌒ | | | ヽ \:::::::::: ` ⌒´ ,/ _ | | /  ̄\ /⌒ .ヽ i 丿 | ヽ、 \/ /(⌒) ξ) ̄ ̄´ \ ./ / / |
さすがの田村も国境突破だけは許さず、関東軍の特務機関に了解を得ることを求めた。
如一は説得に応じ、特務機関に乗り込み土井と直談判を試みるが、
/:::::,r'´ ヽ:::::::::l, l:::::::l_,,_ _,,-‐-: :'l:::::::::l ゝ::iィ'"`゙`t‐l´ ̄~゙i、:.l:::::::::l ソ連に仲裁を依頼する? ゙ビ'--‐i ゙'‐-‐'': :`'´ i丿 ゙i `` : : : リノ ハッハッハッ、 ゙i r--‐ーッ : :r、ノ 冗談も休み休み言いたまえ! ゙i ``''''"´ : :/::l'" . ゙i、,___/: :l_ _,,(F-、, _,,-‐''''""´ !、,_ _,,,..-‐/''´::l゙`-、-V_,,,、、-‐'''"ノ;;;;;;;`゙`'‐ 、,_ ,,-‐'""´ ̄:::::::::/:::::::,rレ'´ i、ヽ--‐ 丿::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;`゙`'‐-- 、 ,ィ'::::::::::::::::::::::::::::/_/ i : ヽ ,ィ':::::::::::::::::::l:::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:ヽ r':::::::::::::::::::::::::::::::::::::,r i : : l:::::::<⌒ ̄:::::::::::::::::::,i::::::::::::::;;;;;;;;;;ヽ _l;::::::::::::::::i:::::::::::::::::::::i :l::::::::::::::>::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::;;;;;;;;;l ::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::::::ゝこヽ :l::_,,,..-‐''´:::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;l、 ::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::::::/:::::::ゝ ,,ィ''´::::::::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;ヽ 特務機関 土井将軍
当然である。むしろ田村がなぜ如一の計画に賛同したのか謎である。そして如一は逆に特務機関の手によってニュー・ハルビン・ホテルに軟禁状態に置かれてしまう。
ところが、如一はホテルの社長近藤繁司の協力を得てホテルから脱出することに成功する。
,ヘ ____ / / /\ /\ / / /( ⌒) (⌒)\/ / / :::::⌒(__人__)⌒:::::\ / 特務機関恐るるに足らずだお | |r┬-| | \ ` ー'´ / / \ / \ / /\ ヽ / \ ノ ミ U ヽ ノ ミ
如一は、ソ連領事館の門をくぐり得意のフランス語で総領事との面会を要求する。
____ /⌒ ⌒\ /( ●) (●)\ イサコーンシヨンフォーメモー /::::::⌒(__人__)⌒:::::\ セシール | |r┬-| | \ `ー'´ /
しかし、如一の思った通りにはことは運ばなかった。
/\___/\ / / ヽ ::: \ | (●), 、(●)、 | | ,,ノ(、_, )ヽ、,, | | ,;‐=‐ヽ .:::::| \ `ニニ´ .:::/ NO THANK YOU /`ー‐--‐‐―´´\ .n:n nn nf||| | | |^!n f|.| | ∩ ∩|..| |.| |: :: ! } {! ::: :| ヽ ,イ ヽ :イ ソ連 領事館員
如一は押し問答の末、領事館から放り出される。
すると、そこには
|,,r''´ ̄ `''‐|_ 鬼ごっこは終わりだ!! ,-‐‐- ,,__,, -‐ 、 r´``'‐-=-‐'"´`':、 {,, -‐r‐ 、__r‐、>ノ `-ト(ミ)‐(ミ)t,,ri'´ ,, -‐''''''''''‐- 、 lj ̄`- ' l`‐' リ ゙i ,,┴‐-,, 'ノ ,ィ´: : : : : : : : ノ、:\ レ _,,.`´,,_ l´ l "''"゙''''''゙ /~ /:::: : : : : : :;' ツ ゙i: :i, lヽ l ヽ__∠_| |::::: : ; ''' ´ l: :l l__i、,,-‐-,,ノ_ __ 〉二ヽ/こ-、|_ l i ,. --、__, -- 、 l ノ _,, -‐ ''''〉,,- ,,__V_,,-'::l``''‐- 、,,_ _,, -‐'' _,, -‐''}:::::::○:::::::::l ⌒゙i- ,,_ `>l‐'、:::::ノ l、::::::ノ〈i , -‐ '''´ / l`l:::::::::::○:::::::} ヽ :::::::`''‐ 、 /::: '' '‐--ッ ゙i`‐'´ `''‐''ノ < ̄ `''‐- 、{ j ' ' /l/ '--‐ッ ゙i `‐ '´ `'‐' }<⌒ ::::::ヽ /::::: , <´ \ / > _ \l -‐ー‐- l'´ / \ 丿 `> :::::::l :::::: :l `'‐ 、_ y''´_, -‐ '"´ l } l ` /l , `'‐ 、,_ \__ /_, -‐'' , ::::l ::: ::l ``'´ l rl_`'‐-ー--'__), l `‐-/‐'' :l ::::l :::l ○ __,,,,,, ,-‐''´{‐- ,,_ミv彡_,,-‐l`'‐、_ l ○ ::l ::::::l :::::l , -‐''  ̄ / l`''ッ‐'´' ; \ / \`''‐- 、,,__ ::l ::::::l ::::::l / / 〉' ,' ', ヽ ___〉 \, :::l ::::::l ___ :::::l / ,  ̄フ / ,' ; l \_ \ :::::l ::::::l :::::l / / `'‐- / ; l_,, -'' l l ::::::/‐- :::::l :::::ヽ ( ノ / ,l ,, -‐''-、' ,,-l l `l ○ ::::::/ :::::l l:::::::: / / -='´‐' ̄`‐-‐ '''`、_,, -''-‐' l ヽ :::::::l :::::ノ /::::: / / , -、 , -、 l ヽ ::::::l ::::::ノ /::::: / l `- ' `- ' l \ ::::::l _,,-'' l:::::: / l l ヽ :::::::l'´ l:::::: / l l ヽ :::::::l . l:::::: _,,ィ',, -‐ '''‐- l l l :::::::l γ⌒) )) / ⊃__ どうしてこうなった♪ 〃/ / ⌒ ⌒\ どうしてこうなった♪ γ⌒)( ⌒) (⌒) \ ∩⌒) / _ノ :::⌒(__人__)⌒ 〃/ ノ ( <| | |r┬( / / )) ( \ ヽ \ _`ー‐' /( ⌒) / /
実は如一は予め総領事に宛て、計画を説明する手紙を二通送っていたのだが、領事は関わり合いになるのを避けて、その両方ともを特務機関に届け出ていたのだ。
____ / \ / ─ ─\ ./ (●) (●) \ | (__人__) |、 r―n|l\ ` ⌒´ ,/ ヽ \\\.` ー‐ ' .// l ヽ . \ | | . \ _ __ | ._ | /, /_ ヽ/、 ヽ_| \ // /< __) l -,|__) > \. || | < __)_ゝJ_)_> \. ||.| < ___)_(_)_ > \_| | <____ノ_(_)_ ) たぶん二回目の逮捕
特務機関に逮捕された如一だったが、田村が如一には本国の内務省から逮捕令が出ていることを理由に身柄は自分が引き取ると主張し如一を救出する。
/ ̄ ̄\__ / _ノ ,ヽ\ \ | ( ●)(.●)ヽ、\ 助かったお! . | (__人__)(<)゚o\ ありがとうだお | ` ⌒人__) | . ヽ .}⌒ ´ ./ (⌒) (⌒'― .ニ二 .イ .√ .ヽ ̄ ̄, -‐ i´ .| i ̄ . | .| | . |
田村さん如一のために尽くしすぎだろ、常識的に考えて。かくして如一は無事に帰国を果たし、妙高に戻る。
しかし、というか、やっぱり、、、
____ / \ / _ノ ヽ、_ \ はやくこの戦争を止めさせないといけないんだお。 / o゚((●)) ((●))゚o \ そのためには、やっぱりソビエトさんに仲裁を | (__人__) | 頼むしか無いんだお \ ` ⌒´ / ____ / \ / _ノ ヽ、_ \ でも、満州からソ連に抜けるのは / o゚⌒ ⌒゚o \ 無理だって分かったお・・・ | (__人__) | \ ` ⌒´ / ____ /⌒ ⌒\ /( ●) (●)\ /::::::⌒(__人__)⌒::::: \ だから今度はモンゴル経由でソ連に脱出するお! | |r┬-| | \ `ー'´ /
かくして再び大陸への脱出を試みる如一は、1945年1月同志たちと最後の食事をとろうとしていたが、
___ /⌒ ⌒\ しばらく出かけてくるけど皆もがんばるんだお。 /( ●) (●) \ (でも、脱出計画は皆には秘密だお・・・) /::::::⌒(__人__)⌒:::::ヽ | |r┬ | (ヽ | \γ⌒=/⌒ヽ_(⌒ |/ / ( ^=/ / ヽ ノ\ | / ,(⌒ヽ/ \ ヽ_ノ ー ' _,イイ / /,ィ /-ヘ ト、LV,.'-‐''"´ ヽ二',_ !|´ ,. ',-‐ト.ヽ, 警察だ! l ‐- 、 r'´ ,..、,ヽ`!|f.ト ', l. r 、ノ` r<ー'_ !.レヘヽ.', _...-:l_`'´| ',、_ 〈 V |:.:',} ,ィ"´ l_-_!!r:!_ト- '" 、ヽ ! /イ:ノ:.:.\ /:l:|:./o::::ヽ-lヽ=''"_> ,./r":.:.:.:.:.:.:\ _..ノ: :!:イ,.,=、、:::f::V:l:|ニ ニ、ノ': : /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\ r:'": : : :.|: |l:(lll):l|::|:::_ノ:!!`: フ, -‐<:.:.:.:.,.ィ"´:  ̄: :ヽ ,.-┴-: :、: :';.:',|l`ー"トr-〈rT|_..-<rヘノ: l/: : :_:_: : : : : :.:.ヽ ,.-イ-:.:.、_: :.:.:.',: ';.:|l::::::::|:|: :レヘf:rヘへL.!: : |: :ィ: : : : : : : : : :.:.:', . /: : : : : : :_>-〉‐‐ヘ!ー〈ヽ/_:ノヘヽノ: :ヽ:.//: :,.-‐: ,ニ、'": :.:.:.:| /: : : /: :'": : :/:.:.:∧:ヽ::」:.:.Ll:.:ヽ:.ヽ:.:.:./: :.:!_: -‐/r-: : ヽ、:.:.:.| /ー: ": : : : : :/|:.:.:.:.!|:ヽ、::::::::::::.:.:.:.:.:トヽ_: -‐: '": :.r'":゙ー: 、: : r-:〉:.:! |: :/:: : : : : l:::l: : : lト:.::::::::::::::: : ::::::l :ヽ: : : : : : : :ヽ、: : : : \: /:.:.,' ',:':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l:.:.ヽ:::_:ヽ、::::::::::::::::::::::::ソ: !:ヽ: :.:.:.:.:.:.:..: : ヽ、: : :/:.:.:./ `丶-‐--‐- '"´ ̄ ',::::::::::::::::::::/イ:/:.:.:!:ヽ、:_:_:_:.ヽ: : : : :.:.:.:.:/ ';::::::::::::::::::::::.:.:.:.:.:./:.: : ヽ: : : ヽ: ヽ: :.:.:.:/ |:::::::::::::::::::::::::::::::::::. : : : :';: : :: ',: :ヽ:.:.:.:.! |:::::::::::::::::::::::::::::::::: : :: :ヽ: : : : :ト: : :.:.:.:.| ___ /⌒ ⌒\ ━━┓┃┃ /(  ̄) (_)\ ┃ ━━━━━━━━ /::::::⌒(__人__)⌒:::: \ ┃ ┃┃┃ | ゝ'゚ ≦ 三 ゚。 ゚ ┛ \ 。≧ 三 ==- -ァ, ≧=- 。 イレ,、 >三 。゚ ・ ゚ ≦`Vヾ ヾ ≧ 。゚ /。・イハ 、、 `ミ 。 ゚ 。
送別会の途中、警官隊に踏み込まれて、如一は逮捕される。
____ / \ / ─ ─\ どうしてバレたんだお ./ (●) (●) \ | (__人__) |、 r―n|l\ ` ⌒´ ,/ ヽ \\\.` ー‐ ' .// l ヽ . \ | | . \ _ __ | ._ | /, /_ ヽ/、 ヽ_| \ // /< __) l -,|__) > \. || | < __)_ゝJ_)_> \. ||.| < ___)_(_)_ > \_| | <____ノ_(_)_ ) たぶん三回目の逮捕
実は満州の特務機関は、如一の逮捕を国内の警察に手配していたのだった。
/ / ゙i, ヽ j ,ィ/ | | lィ' ,ィ/j/ | iリ | /l / '"` | j リ! /,ノ _,、-''''` /リ | _.._ l/ ,.--;==ミ 、 ___,.ノ /{.○-゙‐rV ヽ,/`ヽヽト、 ´ {,.○-`‐‐ 、,.-ト| ,ノ ∧ ゙i, `ヽ,r'´ ノ. ゙、--‐''´| ,,.く ヽ ゙i ヽ、 __,,、-'" 〉 / ハ'´ | ゙i | ' ' iヽ''" ̄ ̄ ̄`゙ ゙、゙i,_r'シニZ`ー┬ト'i _____ , | \ _゙V ヽ,.レ''ヽヽ `ー─''''"´ / \ /./ ヽ/ ,」ヽ __,,、-─‐-、j ヽ / r'´ --‐‐'''"´ ヽ \ (.r‐'''""゙゙`ヽ,`) / l .| __,,、--`ヽ \ ___ヽ /´| ∠__ j | ,⊥`ー 、 ゙! レ' | | | | -‐''"´ ヽ、⊥ヽ| |彡'| |
如一は特別高等警察、いわゆる特高による拷問に近い取り調べを受けたが、1945年6月に釈放にこぎつける。釈放の理由は、伝記によれば、特高の依頼で如一の思想の調査にあたった平泉澄という国粋主義の学者が、如一は立派な思想の持ち主だと報告したためらしい*2。国粋主義者に思想の太鼓判を押される如一、さすがである。
そして同年7月、
____ /⌒ ⌒\ 『帝都防衛最高司令官に /( ●) (●)\ 飯村譲中将が任命』.... /::::::⌒(__人__)⌒:::::\だってお | |r┬-| | __ \ `ー'´ / ___ ヽ  ̄`"¬ー--、,,,_ _,,,、-ー"´ ̄´....,., / ∨ ;:;:;;;;:;:;:;::;:;;;:;:;;:; `Y´ ;;::;;:::;:;:;:;:;;;:;:;:;::; / ', ;:;:;::;::;:;;;:;;:;:;::;;:;;:;: i ;;:;:;:/ ̄ ̄/;;:;:;: / ', ;:;::;;::;::;:;;::;;;;:;:;;:;: i ;;:;:/ijknw/;;:;::: / {⊃;;:;:;;:;::;:;;;:;::;:;;::: l ;;:;;:;;:;:;:;;;:::;:;;:;⊆} ヽ⊃) ̄7;;:;:;:;::;;:;: l ;:;:;:;;:;::;:;::;;::; ⊂ノ / /__7;;:;;;:;;::;;;; l ;;:;;:;:;:::;:;;::;;;:;: / / ;:;:;:;;;;::;:;:;:;::::;;;:;:; ! ;;:;::;:;:;;:;;:;::;:; { ノ / ̄/ ̄/ii7lkl/7 i []ikllihXCV ヘ、_  ̄`"¬--、,,,.__¬ }L ]_,,,、-ー"´ ̄  ̄`´ ̄ .. ____ / ― -\ 飯村中将、 . . / (●) (●) なつかしいお。 / (__人__) \ | ` ⌒´ | 中将は正食の良き理解者だったんだお . \ / . ノ \ /´ ヽ
実は、開戦前の偕行社での講演も飯村中将の計らいによるものだった。
____ ヽ v / /⌒ ⌒\ -(m)- //・\ ./・\\ ≡ /::::::⌒(__人__)⌒:::::\ いいこと思いついたお! | `ー'´ | / ∩ノ ⊃ / ( \ / _ノ | | .\ “ /__| | \ /___ / ____ /⌒ ⌒\ 飯村中将を説き伏せてクーデターを起こすんだお! /( ●) (●)\ あとは食養会時代に懇意にしていた久邇宮を /::::::⌒(__人__)⌒:::::\ 総理大臣に擁立して新政府を立ち上げるおっ! | |r┬-| | \ `ー'´ /
そして、案の定、
____ / \ / ─ ─\ ./ (●) (●) \ | (__人__) |、 r―n|l\ ` ⌒´ ,/ ヽ \\\.` ー‐ ' .// l ヽ . \ | | . \ _ __ | ._ | /, /_ ヽ/、 ヽ_| \ // /< __) l -,|__) > \. || | < __)_ゝJ_)_> \. ||.| < ___)_(_)_ > \_| | <____ノ_(_)_ ) たぶん四回目の逮捕
クーデター計画が当局に漏れていたのかは不明だが、計画を実行に移す前に甲府市内で如一は逮捕されてしまった。結局、如一は拘留されたまま終戦を迎え、9月に釈放される。
釈放から程なくして如一は連合国軍(GHQ)最高司令官のダグラス・マッカーサーに手紙を送る。
その内容は
___ / \ / \ , , /\ 特高を廃絶せよ。 / (●) (●) \ | (__人__) | \ |r┬-| ,/ , -‐ (_).ヽ`ー'´ ィヽ l_j_j_j と) i  ̄`ヽ | l ___ / ,,-、、 ゙^ー-、 ,/ ,,-i i!;;├...,,__ ゙^-、 i /l=_゙三_ =_ `-、:::::/ `/-――-- 、..゙ー- ::|' ` ,―、_,.―..、 ゙-- ,::ノ ・・・・ L;;/ 、ヽ::::ノ―b, i _ | `` ヽ _/ |ii.|___|、ノ___| l .| |i_| i ‐ ` / ト、 `--―" // /ヽ へ /
マッカーサーが如一からの手紙を読んだのか疑問であるが、現実に特高は廃止され、特高関係者は公職追放された。
ところが、
/ ̄ ̄\ あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! / \ 『おれは特高を壊滅させたと思ったら / ヽ ノ u \ いつのまにか自分まで公職追放されていた』 /´| fト、_{ル{,ィ'eラ, | /' \ .(__人__)⌒` / な… 何を言ってるのか わからねーと思うが ,゙ / )ヽ(,`⌒ ´ / ヾ、 おれも何をされたのかわからなかった… |/_/ /  ̄ ̄ ̄ ヽ // 二二二7 __ `ヽ 逮捕だとか拷問だとだとか /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ -‐ \ そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ / // 广¨´ /' ´ ̄`ヽ ⌒ヽ ノ ' / ノ `ー- 、___ ヽ } もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ… _/`丶 /  ̄`ー-- {. イ
当局は如一の反戦運動を問題視したらしい。公職追放はしばらくして解除されるのだが、如一は構わず活動を続けた。特に世界連邦運動には積極的に関与していたようだ。世界連邦運動とは世界各国を統合した連邦政府を打ち立てようとする国際運動である。ご存知の通り、今日でもその理想は実現していない。
つづく
つづきは戦後と死後の如一。
如一の実力
以上のように戦時中の如一は荒唐無稽な計画を立ててそれを実行し逮捕されるということを何度も繰り返している。無邪気で幼稚にすら見える如一だが、意外にも何度も周囲の人間に助けられ、協力を得ることに成功しているのは興味深い。如一が変わり者だったことは間違いないとは思うが、単なる"孤独な奇人"ではなかったようだ。
これには軍部と密接な関係にあった食養会時代の人脈が効いている部分もあるだろうが、
- 縁もゆかりもないフランスにほとんど裸一貫で乗り込んで、最終的には現地でも一目置かれる存在になったこと、
- 医師でもないし特別な学識もないのに食養会の指導者に上り詰めたこと*3、
- 多くの弟子たちを育てて、海外に送り出し、結果的にマクロビオティックを世界に広めることに成功したこと、
などを考えれば*4、自ずと桜沢如一という人物のコミュ力人を動かす力の高さがうかがい知れる。桜沢の理論と思想の問題はいかんともしがたいが、純粋に人間として見た場合には、如一は脚色なしでも面白い人物だったのかもしれない*5。